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山口地方裁判所 昭和33年(行モ)4号 決定

申請人 田中幸

被申請人 防府市長

主文

被申請人の別紙目録記載の建物に対する昭和三十三年八月二十六日附防土第一二三八号除却命令書に基く一切の執行は当裁判所昭和三三年(行)第八号行政命令取消請求事件の判決が確定するまでこれを停止する。

理由

申請人代理人は主文同旨の決定を求める旨申立てその理由として陳述した事実の要旨は被申請人は昭和三十三年五月三十一日防府市告示第二十三号第二十四号第二十五号を以て防府市大字宮市第四百四十七ノ一番地(以下本件土地と略称する)を市道多々良千日町線の道路区域と認定し同年六月供用の公示をなした。そこで申請人は同年七月二十八日道路占用許可を申請したが、同年八月七日不許可処分に付されたので、同月十一日異議を申立たところ、同月二十六日棄却されたので九月十九日訴願を提起し係属中である。しかるに被申請人は申請人に対し同年八月二十六日防土第一二三八号除却命令書を以て道路法第七十一条第一項に基き別紙目録記載の建物の除却を命じ、同年十一月二十二日防土第一七〇八号戒告書を以て行政代執行法第三条に基き同年十二月二十日までに除却しないときは代執行をなす旨戒告した。しかしながら申請人は昭和二十五年一月頃右建物を建築するに際し建築許可を受けており、又同年六月頃防府市土木課用地係主任有吉角見と本件土地買収の交渉をするにあたり天神前鞠生線道路のうち防府天満宮前から申請人方までの道路が拡張完成の上使用する直前まで右建物を存置できることを条件として本件土地を防府市に売却したのである。しかるに右条件は未だ成就していない。よつて本件除却命令は違法である。なお、道路占用許可申請は前述のとおり適法に訴願手続として係属中であつて未だ最終的に許否の決定をみないのに除却を命じこれを執行するのは不当である。そこで申請人は既に本年十二月八日当裁判所に行政命令取消請求訴訟を提起し目下係属中であるが、判決の確定を俟つにおいては、到底回復できない損害を被ることは必至であるから、ここに本案判決が確定するまで右除却命令に基く一切の執行の停止決定を求めるため本申立に及ぶというにある。

よつて一件記録を精査し、当事者双方の意見を聴き諸般の事情を考慮した上、申立人の主張事実は一応理由があるものと認められるから行政事件訴訟特例法第十条に則り主文のとおり決定する。

(裁判官 永見真人 松本保三 丸尾武良)

(別紙目録省略)

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